2017/03/26

【映画 感想】10 クローバーフィールド・レーン  ―真実は自分の目で見ても、受け入れられるかは別問題―

[映画感想]


10 クローバーフィールド・レーン 鑑賞

(原題:10 Cloverfield Lane)
2016年公開

オススメ:★★★★☆
(好みが別れるところ)

ご存知、現在八面六臂の大活躍をしているJ・J・エイブラムス監督の2008年公開作品「クローバーフィールド/HAKAISHA」の続編です(キリっ)

あの映画、ミステリアス満載のパニックムービーでしたよね。
主人公たちも含めて、見ている側も何が起こっているのか?どうしたら良いのか?
そもそも現実なのか?もっと言うと、助かるのか?が解らない。
何しろ、与えられる情報は極端に少なくて、スクリーンに映るほんの少し断片、聞こえる、見えるものを繋ぎ方も解らないままに思いとどめていくしかない。

その意味では主人公達が直面する恐怖や不安は、見ている側も共有できるから、初めて観た際にストーリーに引き込まれていく=自分が体験していると錯覚していった感覚は今でもよく覚えています。

僕も一度観て、二度観て、三度目にネットやら何やらの情報をつなぎ合わせて、世界観の60%ぐらいが解ったかなぁというレベル。(もちろん、僕の理解力不足もあります、はい)

最後の数分にようやく全容らしきものが見えてきて・・・・、あぁ、「あんなもの」が現れちゃぁ、おしめぇよってんで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と、いうことで、その続編としてこの映画の製作が発表されてから個人的にウズウズしていました。

ムムム!!!!

この映画、他の感想やレビューでも多く言及されています。
その多くにワタクシも賛同いたします。はい。

が、ひとりの純粋な映画ファンとして、オススメするとしたら

何の予備知識も入れずに観たほうが楽しめる。

と、申し上げたいです。

「予告編」の構成にこの映画は非常に優れていて、ドキドキ/ワクワク感をもの凄く増幅してくれます。
だが、しかし!!!この映画の内容について鑑賞前に調べるのは、できればここまでにしてください!!!!
と、少々無理難題をここで書いてしまいましたが、これは切実なコメントです。

予告編が傑作なので、ある意味では「予告編が全て」だとも言えてしまうのが、鑑賞後の率直な感想です(笑)


とは言え、それでもこの物語「面白いよ!」と紹介する記事をこうして書かせもらうにあたり、あまりにも読んでくださる方にポワンポワンとした事しか伝えられていないのは、本当に失礼なので、文月陽介的に映画を楽しむためのポイントをいくつか挙げたいと思います。

★10 クローバーフィールド・レーンの楽しみ方\(^^)/

①とにかく耳を澄ませる。
登場人物が話すこと、メディアから発信されること、これらを聞き漏らさないで!

②彼らが現在の場所にどうして居るのか理由を考えてみる。
可憐なヒロイン/メアリー・エリザベス・ウィンステッド
陽気な兄ちゃん/ジョン・ハワード・ギャラガー・Jr
なんかでっかいおっさん/ジョン・グッドマン(名優)

この映画のキモはこの3人です。
どうして3人は出会った?
どうして3人でこの場所にいる?
どうして3人だけしかいないのか?

話の端からどうにかこうにか得られるパズルピースを自分なりに繋ぎ合わせてみます。

③たくさんのどうして?をつなぎ合わせてもなお『全てを疑え』
クローバーフィールド名物、情報途絶下の舞台。①と②を繰り返して、物語にどっぷり入り込んでいくと、必ず「???」と疑問符が浮かぶと思います。
その時にようやく、この物語の「事実」と「真実」と向き合う準備ができたと言えるのです!

④結末を見届けるのは、あなたです。
この映画の感想が割れるのは、『クライマックスからエンディング』に判明する事態をどう感じるのか?によるのだと思います。
受け取った物語は、受け取った人が感じたまま。僕のスタンスはいつもそうです。

ワタクシは、、、、えぇえぇぇぇぇ!?と驚き、ちょっと笑ってしまいました。

とは言え、観たかった映画を観られた事に感謝。

2017年映画鑑賞 63本目




■補足
本作、監督はJ・J・エイブラムス氏ではございません。
ダン・トラクテンバーグさんという、今作が初監督の気鋭の方です。
有名なゲーム「Portal」を題材にしたオリジナル短編動画がYouTubeで19,585,466 回(17.3.26時点)も再生!!!!!!されていらっしゃる方で。
その短編動画も面白い。Portalを知っていなくても、Portalの面白さと恐怖が味わえます。
ちなみに彼の動画はこちらです
*YouTube公式channel↓↓↓↓
Portal: No Escape (Live Action Short Film by Dan Trachtenberg)





2017/03/19

【映画 感想】アメリカン・レポーター  ー何かを得るために、すっ飛んでいった何か(W.T.F!!!)―

[映画感想]


アメリカン・レポーター 鑑賞

(原題:Whiskey Tango Foxtrot )
2016年公開

オススメ:★★★★☆

ルポライター時代にアフガニスタン紛争に従軍記者として現地入りしたキム・バーカー女史の回想録を原作とした映画です。
原題はお下品ですが、こういうの好き。

普段何気なく目にしているもの。
目に映る物を僕たちはどれだけ意識してい見ているのか。
いやぁ、見ているようで、見ていないということが多いもの。
例えば家を出て、職場に行くまでを思い浮かべてみる。
いろいろな事情を抱えて、いろいろな表情を浮かべて通りを歩く人、自動車、バス、駅、電車・・・
テレビで、スマホで見る動画、ニュース。
僕たちは誰もが見られていて、同時に見ているのだけれど、互いにどういう立場で「そこ」にいるのかはあまり意識していませんよね。

この物語はニュースメディアで「見ている側」(もう少し正確に言うと裏方)だった主人公が、「見られる側」に飛び込んでいく話です。
それも若くて花形の人気女子アナやタレントが帯番組でお茶の間に登場するといった類の「見られ方」ではなく、従軍記者として戦場でレポートをしていく「見られ方」です。

あぁ、あの人いいなぁ、羨ましいなぁと思いながらも、結局は同じままで、
その繰り返しで毎日が過ぎてしまう。
エンジョイしているようで、何かが足りない気がしてしまう。

もやもやしていた主人公のキムが選択したのは、よくネットの「まとめサイト」でも見られる『思い切って環境を変えましょう』というものだったけど、

何故に、戦場!!!

と。

このブログでも何度か仕事に関する話題を書きましたが(カンパニーメンなど)
システムに組み込まれた僕たちは「何かを得るには、何かを犠牲にする」ことがどうしても必要になってきます。

名誉も、対価も、その人が何かを犠牲にして(犠牲という言葉が刺激が強いけども)得ている。それで得られたものとを天秤にかけてしまうのが性というもの。

もちろん、これは映画だから「描かれていないもっと辛い部分」が彼女の背中にはたくさん溢れているんだろうけど、

ポジティブで、タフで、自分を解放した、アメリカのというより、女性の一種の強さが物語をとても明るい雰囲気にしているのです。
映画のジャンルはコメディとなっているようですが、内容はコメディじゃないんじゃないかな。。。

世の中には不要な仕事がないという言葉があるように、従軍記者だって世界を知るためには絶対に必要な仕事です。
だけど世界には問題が多すぎるから、メディアが「提供すべき情報を取捨選択している」という、ブラックな面もこの映画を通して改めて知ることができました。
メディアだって、慈善事業じゃないから、話題性を優先するのは解るんだけど・・・
メディアが世論を形成できるんだから、メディアが情報を埋もれさせるのはどうなのかなぁと。。。
※映画やドラマで描かれているブラックな話題って、カットもされずに放映されている以上は「事実」としてそうしたことがあるからだろうと僕は解釈しています。描かれていないことのほうがもっと多いだろうけど。

ともあれ、彼女と一緒に悩み、驚き、笑って、怒ることができる約2時間の旅はとてもファニーで、元気がもらえる作品でした。

原作者:キム・バーカーさんの公式サイト(英語)
http://www.kim-barker.com/#wtftrailer

ご本人と主演のティナ・フェイがすごく似ていると感じたのは僕だけだろうか。

2017年映画鑑賞 61本目

2017/03/12

【映画 感想】ディス/コネクト ―そして、誰も救われなかった―

[映画感想]



ディス/コネクト 鑑賞
(原題:Disconnect)
2014年公開

オススメ:★★★★☆

これも、見逃し映画!!!

・・・こうしたカタチでいろいろな方に映画の感想を書かせてもらっています。
僕もソーシャルネットワークに「繋がる」ひとりです。

小さな繋がりの集合体がこの社会。

今も昔も、人は孤独を感じるもの。

知らない他人の中で孤独より、誰とも関わらずに孤独であるほうが良いなんて月並みな言葉もあるのだけれど、何一つ社会と繋がることを拒否することは生きている限り不可能だ。

繋がりの多さ、少なさ、深さ。どれもそれらを測るバロメーターにはなるのだけれど、適性な範囲を「これです」と決めることはできない。
リアルで充実していること、ネットで充実していること、そのどちらが良いのかもその人の自由だ。

距離と時間の概念をすっ飛ばしたデジタル社会では、クリックやタッチだけでどんな場所も覗くことができるし、発信できる。

今更言っても仕方がないけど、だから、バランスが崩れてしまっている。

隣に言葉をかわすことができる家族がいても、友人がいても、不特定多数に呟くし、生活情報を、感情をポンと載せて端末を手放せない。

世界は常に動いているから、夜中だろうと休みだろうとあらゆる言葉(情報)が流入して、流出していく。

初対面の人と顔を合わせるのは苦手だが、メッセージを送るのは、匿名で書き込むのは、気も遣わないし、抵抗もない。

自分自身でプライバシーを「丸裸」にしているのに、結果とんでもないこと(炎上)してしまうと「どうしてだろう?」と苦しんでしまう。
会話しているのが「本人」であるかも解らないのに、気を抜けば情報を抜き取られてしまっているかも知れないのに、「繋がる」ことで得られる安心を求めてしまう。

SNSを誰もが使い、手軽になってしまったからこそ、この映画の出来事を単に文章にしてしまうと「ありふれた」ものだなぁ「自業自得」だなぁ、と感じてしまう。
よく考えると、それって怖いです・・・・

なりすまし
炎上
情報流出
ネットポルノ

日常的に見聞きするありふれた出来事がこの映画の主軸です。

だけど、その「ありふれた出来事」を「ありふれた出来事」だと感じてしまう、その感覚が麻痺していることが、「繋がる」という行為の最大の恐怖なんだろうな。

そして僕は、救いをどこにも求められなくなっている今とこれからの世界の断片をこの映画を観ることで、「繋がり方」を見つめ直しました。

僕は今誰と繋がっているのだろう。そしてこれから、誰とつながっていくのだろう。

それにしても接続と切断を繰り返しながら、最後にひとつの道へと続いていく構成は、思わず唸ってしまうのでした。

2017年映画鑑賞 56本目


2017/03/11

【映画 感想】13時間 ベンガジの秘密の兵士  ―ランボーなんかいない。厄介者達が守りきった、2012年のアラモライン―

[映画感想]


13時間 ベンガジの秘密の兵士 鑑賞

原題: 13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi
2016年公開

オススメ:★★★★★

※サブタイトルがなんだかファンタジー調に見えますが、ゴリゴリのシリアスドラマです。

―経緯、原因、背後関係、過去の負の遺産。
何万語を費やしても、そして費やさなくとも、「シンボル」となってしまうものがある。

9.11。(そして日本なら3.11)

こんなにも短い数字が物語るのは僕達なんかが軽々しく書くこともできないものなんだと個人的には思う。
ネガティブでも、ポジティブにでも「シンボル」はどうしようもないくらい「シンボル」なのだ。
2012/9/11。その日にリビアで起こった事件を描いたこの映画は9.11という数字が、アメリカにとって、世界にとってどのようなものなのかということを再認識させるものだ。

いつだって本当は必要であるはずの人が、邪険に扱われることはある。
インテリジェンスの最高峰だと自負しているCIA(の神話は崩れてしまったけど)の情報局員たちは名門大学を出て、成功を約束された、あるいは世界を変えているのは自分たちとと信じてそれぞれの「準軍事作戦」やら「諜報工作」に従事してる。

彼らにも彼らの言い分はあることは認めるけど、「使う側」の人たちなのだ。
だから自分たちの仕事を邪魔する連中は厄介者だと感じてしまう。
彼らの任務は「危険地域」で行われているという事実と任務を全うするには「安全」であることが大前提だということを忘れて。

この物語の主要人物たちは元軍人でプロフェッショナルではあるけども、「使われる側」の民間軍事会社の職員だ。
使っているCIAからすれば「部外者」だし「金食い虫」だし「ごちゃごちゃ言わずに静かにしていろ」って存在。

あくまで外注さん。こう言えば、サラリーマンとしてはしっくり来るのかも。
一緒に仕事をするけど、身内ではない・・・そんな感覚。
それってちょっと切ないと個人的には思うのだけど。

しかし、そんな使う側の彼らも、結局はピラミットの頂点にはいない。
それが緊急事態の際に露見する。
自分たちこそ、他国に居座る部外者(=厄介者)だということが・・・
「誰も助けに来ない」という事実とともに。

圧倒的な怒り、暴力の前では、生まれも、育ちも、容姿も、性別も、学歴も、年収も、キャリアも、将来性も、全く無意味だ。

そうした時に顔色ひとつ使えずに、「自分たちが助けに行く」「自分たちが守る」と淡々と装備を手に取る男たち。それが「部外者」で「金食い虫」で「ごちゃごちゃ言わずに静かにしていろ」と言われていた厄介者たちだった。

漢。

本筋で言えば、民間軍事会社の職員である彼らは「元軍人」ではあるが、契約外(映画を見ればイレギュラーの付随業務として一時的に命じられる事情もあるのだけど)の異常事態に対してここまで危険を犯す必要はないように思える。

それでも仲間の、同国人の(対象がVIPであることも、この際脇において)、危機を見捨てない。10人にも満たないチームでも、「自分たちができるとこ」を遂行する。

上から目線で見下すようにしていた彼らの背中に、戦う姿に、「使う側」の人間たちが何を感じたのか。

そして、ランボーなんかいない現実の戦闘では、失われるものが多すぎる。。。。
同じ実話をベースにしたものでも、
ブラックホーク・ダウン(2001年)の様に、大勢の仲間がいるわけでもない。
※モガディシュの戦闘を参照
ローン・サバイバー(2013年)の様にQRF(即応部隊)がやって来る希望もない。
※レッド・ウィング作戦を参照

いつまで、どこまで戦えば良いのか?を胸に秘めながら目の前の事態に向き合う彼らの悲壮感が怒号と銃声、爆音のなかに浮かんでは消えていく。
勝者などいない、戦場で。

あぁ、マイケル・ベイ監督=トランスフォーマーと思ってしまいがちだけど、もちろんもちろん、それだけじゃない事がよく分かる。
ワタクシは「ザ・ロック」の頃から大好きです♫

2017年映画鑑賞 56本目

2017/03/07

【映画 感想】シング・ストリート 未来へのうた -他の誰でもない、「君」に 届けたい、切なすぎる心―

[映画感想]





シング・ストリート 未来へのうた 鑑賞

(原題:Sing Street)
2016年公開

オススメ:★★★★★!!!!!!!!!!!!!!!!!!

世間は「ラ・ラ・ランド」に盛り上がっていますが、地味に違う音楽映画の感想です(笑)

―僕たちはどうあっても進んでいく。
どうあってもベクトルは固定されていて、戻ることはできない。
それが当然、当たり前、そんなの普通じゃん。
もしかしたら、そう思うことすらしないで生きている。というより、
意識していたらやっていられないのかも。

だから、だからこそ、存在する。
誰もが経験するかけがえのないものとして、僕達の中に、刻まれていくもの。

「あの頃」

そう、あの頃。
ただわざわざ言うまでもなく、あの頃の連続体が今だ。
それでも、手繰り寄せる紐の長さが長いほど、価値は上がっていってしまうもの。。。。

あなたは今をどう感じていますか?

そして「あの頃」をどう感じていますか?


この映画が連れて行ってくれるのは、彼らの世界であると同時に、僕達大人の誰もが持っている「あの頃」なのです。(ま、予告編に書かれてしまっていますが・・・)


尊敬する作家の神林長平氏なんかは(というより、SFファンからすれば「文月、お前に言われることもないよ」とのツッコミを承知です)「僕達が目にする現実」とは「主観」「認識」というフィルターに覆われているから、見えているものは「リアル」ではない。
というようなことを書かれています。


そのとおり。僕達が描く今も、過去も、未来も、主観というフィルターを通して映っていて描く時の気持ちによって全く色が変わってしまうことも確かです。

だけど、それぞれのココロが通ってきた「物語」は間違いなくその人の、その人達のものであるし、他の誰にもその価値を下すことはできないのではないかな。

そう、そして僕達のようないい年齢になってしまった人にとってはいくらか抗議したくもなるけれど、今を生きる若い子(羨ましい)にとっては80年代、90年代とはもはや「ノスタルジック」さを感じる別世界になっているんだと思う。


一部の例外を除けば・・・あの頃は、何もなくて、だけどたくさん持っていた。
手をあげれば、仲間が増えて、勢いだけでも進んでいられた。
歌は今よりも遠いのに、ずっと近くにあった。
今でも同じだけど、あの頃の僕たちも「だって、歌いたいから、歌うんだ」という気持ちは強かった。


エネルギーをどんなところへも注げる特権―

つまづいても、転んでも、すぐに起き上がれる生命力―

希望を希望と素直に呼べるココロ―

全てのマイナスを、変えていける混じり気のない情熱―

例え貧しくても、苦しくても、悩んでいても、それでも夢は見られる―

夢は誰のものでもない―

それが10代という、この世で最も幸せな時代。



打算もなにもなくつるんでいた友達との、嫌な大人との、煩わしい両親との、気がついたら隣りにいる兄弟、姉妹との、そして、全てを投げ打っても想いを届けたいと「あの人」との・・・・

全ての関係がギュッと詰まった、本当に明るくて、切なくて、暖かい世界。

彼らの「あの頃」と僕達の「あの頃」が繋がった時に、胸の奥からまるで火山みたいにココロが解き放たれる・・・・
それも、とびっきり直接的で情熱的で不器用な、最高の歌とともに。
だから、こんなにも切なくなるのだろうと思う。


現在は物質的にも経済的にも文化的にも、少なくとも当時よりは恵まれている反面、何かと境界線が曖昧で、不安定に思える。

目の前の出来事がたとえ理不尽でも、グッとこらえて作り笑顔をしてしまう。
目先のことすら不確かなのに、自己顕示欲の現れ方が、あの頃と変わってしまっている。

情熱は持っているけど、ハチャメチャなベクトルではなくて、生活のためだとか、理想のためだとか、利益のためだとか、義務だとか、権利だとか・・・・
システムに組み込まれてしまった僕達はその枠の中でどうにかこうにかしてしまっているのではないだろうか。。。。。

ワタクシだってそうです。サラリーマンだし、社会の、組織の一員だし、税金払うし、生活費は持っていかれるし、背負ってしまったものを簡単には下ろせなくなってしまっている。
だけど、背負っているものは必要なものばかりなのだ。

それが肩に乗っているから、ということを言い訳にしてしまう事は決して悪いことではないのに、この物語の彼らの純粋さ、ひたむきさ、素直なエネルギーの発露を目の当たりにしてしまうと、どうして気恥ずかしさを感じてしまうのだろう・・・・・

それなのに、

突き進んで良いと、応援したくなる。

どの子も恵まれているとは言えない。
むしろ恵まれていない事が普通だ。

その中で、できる事で、やれる事で、自分を表現すれば良い。
なぜなら君らにはそれができるんだから!


おそらく多くの人が、あの頃とは別の道を歩いているのかもしれない。
それで成功している人も、満足できない人も、その途中の人も、多いのだと思う。

ある映画でも言っていたが「残念ながら、誰もが大統領になれるわけではない」


この映画をきっかけに、何か新しいことを始めようだとか、今からハチャメチャをしなさいだとか、そういうことではないのだろうな。

僕たちは最高に輝いているコインをいくつも手のひらに持っていて、それを時の巡りの度に手渡しながら過ごしているのかも知れない。
コインの輝きは決して消えることがないのだ。

そういう訳で「あの頃」は光り輝いているんだと思う。


映画の主人公は、単に憧れの娘の前で格好つけようとしただけだった。
それでも、物語は動き出す。
それでも、世界は変わっていく。
それでも、思いは熱く燃え上がる。
自分の力ではまだどうしようもない世代。
それでも、その時だからできることを、感じることを、表現できることは、将来どのようになったとしても糧になる。
それでいいんだ。それでいいんだ。

いい歳になってしまった現在だからこそ、彼らが劇中でハチャメチャすることを理解できるし、口では小うるさく言うかもしれないが、自分自身を重ねてしまうのだ。

どんなにお堅い人でも、真面目な人でも、「あの頃」は最大公約数としてみんな「同じ」じゃないか?

彼らが突き進む姿を観ながら、大切な忘れ物を拾いに行ってみるのもいいのではないだろうか?

まぶたの裏に映し出される、僕達の物語。
彼らの純粋過ぎる音楽に、その物語を浮かべて観てもらいたいと切に思うのでした。
夢を追いかけている青年だけではなく、大人が観るべき物語。

この映画に出会えて良かった。
似た感じの作品だとジャック・ブラックのスクール・オブ・ロックも大好きだけど、この映画は直接すぎて何倍もグッとくるのです。。。。

忘れてはならないもう一人の主人公がこの物語のスパイスになっています。
劇中大切な役割を担ったある人。
そのある人の姿に僕は最後の最後でやられました
この映画のラストテロップを観て、あ、この思いは正解だったと(笑)
・・・・あぁ、いい話。


2017年映画鑑賞 51本目







2017/03/03

【映画 感想】ヴィジット(主演:M・ナイト・シャラマン監督) ―知らないことが、一番怖い―

[映画感想]


ヴィジット 鑑賞
(原題: The Visit)
2015年公開

オススメ:★★★★☆
※謎解きが好きな人にはオススメ。トラウマ注意

監督のシャラマン氏はブルース・ウィルスのシックスセンス(1999年)やマーク・ウォールバーグのハプニング(2008年)なんかを手がけている。
密やかな恐怖を描くのが持ち味なのですな。
POV方式の映画です。
※POV方式とはPoint of View Shot方式の略称。ブレア・ウィッチ・プロジェクトやクローバーフィールドなんかが有名ですな。

実は普段はあまりホラーを観ないのですが2016年末から17年1月にかけては、結構観ていました。幽霊物だとか、ゾンビ物だとか。

ヴィジット、この映画もその類だろうなと思い込んでいたのが仇になってしまいました・・・・

そして、興味深いのは恐怖の質がある瞬間からガラリと変わるということでした。

POVものとしては、完成度がなかなか良い映画だと思います。

物語のあらすじとしては・・・
長年疎遠だった母方の祖父母。
主人公の姉弟ふたりは休暇を利用して、祖父母と初めて交流をするために1週間祖父母の家でお泊まりをする事になりました。
母は祖父母との間にとある問題を抱えていて、同行はしません。
初対面の祖父母はにこやかに姉弟を迎え、ふたりはこれは楽しい休暇になるのではと安心した。

だが、しかし!!!!ってオイ!!

と、若いふたりの安心は呆気なく砕け散ります。
この映画、しかし!!!!ってオイ!!の連続です。
・・・・本編のネタバレになってしまうので、細かい描写は予告編なんかに譲ります。

僕達のように世間に擦れてしまった(笑)大人ですら、「異常」であることを受け入れたり我慢したりすることが難しいのに、まして一番多感な時期の少年少女が目の当たりにするにはあまりにも刺激が強い、、、、

それでも恐怖を押し殺して、目の前の出来事と真正面から向き合う彼女たちはすごい。
これが、若さか・・・

いい歳をしたマダオの僕ですら(汗)、観ていてゾッとすることが結構多く、それでいて「謎」が何であるのかを探りたくなってしまう。
気がついたら前のめりで映画を観ている。

そういう意味では、本当にスリリングな体験ができました。

う~む。
古くから家族の繋がり、絆を重んじていてそうした作品が多い欧米の物語としては、これは逆説的に描いたものになるのかな。

たとえば日本の作品では昔からそうした要素が弱いと言う声もあって、それは実社会をそのまま反映しているのだろうと思う。(もちろん、全くないのではなく、相対的に弱いということ)

ソーシャルメディアが浸透した今でも「よく知らない他人」も多いし、翻って「よく知らない身内」も多いからこそ、この物語も成立しているんだよな。

エンディングを迎えた後で、各場面に散りばめられたパズルを自分で嵌め込んでいくことで謎の答えがグッと深まるでしょう。
そのあたりは「単なる怖い」映画にしなかったシャラマン監督の力量でしょう。

―はからずも僕も本当に小さい子供の頃、幽霊物のホラー映画を観て、夜眠れないと母親に訴えた時に彼女が返した言葉が、この映画を象徴する言葉になりました。

「いい?一番怖いのは、人間」

怖いもの見たさ、という部類の好奇心って危険だな。。。。
でも、サブタイトルにも書きましたが、知らないことが一番怖いということもありました。

2017年映画鑑賞 37本目

2017/03/01

【映画 感想】悪党に粛清を ―もう金輪際、相乗りはゴメンだ。―

[映画感想
]

悪党に粛清を 鑑賞
(原題: The Salvation)
2014年公開

オススメ:★★★★☆

これも観よう観ようと思いつつ、そのままになっていた映画。
主演のマッツ・ミケルセン氏は、
キング・アーサー(2004年),
007・カジノ・ロワイヤル(2006年),
ヴァルハラ・ライジング(2009年),
偽りなき者(2012年)
ハンニバル(2013年~)
と代表作が続き、コジマプロダクションの『DEATH STRANDING』にも出演されることでも知られています。
※参考↓↓(youtubeに飛びます/コジマプロダクション公式channel)↓↓
HideoTube (ヒデチュー) 第06回:北欧の至宝 マッツ・ミケルセン特集
(あ、ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー、ドクター・ストレンジ(2016年)も忘れずに)

そして本作品でもマッツ様の魅力がまた、光る。

・・・・とはいえ、この作品は結構ハードでした。

怒り。

どうしようもない、怒り。

どのような言葉も、どのような高尚な教えも、それを抑えることができない程の、怒り。

喜怒哀楽は人間の持つ根源的なものだ。

どの感情も結局人には必要で、それが人を人たらしめているのだけれど、そのためにかえって苦しむことにもなる。

怒り、そして哀しみ。
サルトルが『死に至る病』だと言った、絶望。
主人公に降りかかるのはこの病なのだ。
どんな状況になっても諦めてはいけない。希望を捨ててはいけない。
僕たちはこう教えられてきたけど、呆気ないほどの速さで全てが変わってしまったら、
手を差し伸べる余裕もなく、還る場所も失くなってしまったら?

哀しむ時間すら与えられなかった人間が支配されるのは、圧倒的で『魂が燃え尽きるほどの怒り』だ。

この作品、原題と邦題の向かう先が間逆であることも興味深い。
Salvationって、僕は「救い」と解釈したのだけど、この映画にこの言葉を浸してみると、うむ、2つの方向性が見えなくもない。

絶望からの救済。
救われるには、代償を払う必要があって、それも自分自身で支払うことが条件だと言うのだろうか。

誰だって頭にくることはある。
怒鳴り散らすこともある。
拳を振り上げ、叫び声を上げることもある。

でも『魂が燃え尽きるほどの怒り』にその身を焦がしてしまうと、人はあんなにも哀しい顔になってしまうのだろう。それが怒りという感情の根源なのだろうか?

マッツ・ミケルセン氏はこの物語の全てを、その表情だけで背負ってしまった。
粛清しても、救われるかどうかなんて、一体誰が言い切れるのだろう。。。。

あぁ、マッツ様、ああいう表情をさせたら、貴方の右に出られる人はそうそういない。
マッツ様ファンは必見の一本です。

2017年映画鑑賞48本目

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