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2017/10/07

アウトレイジ最終章 感想 ~群れを離れた狼の悲哀~【映画レビュー】

映画『アウトレイジ 最終章』本予告【HD】2017年10月7日公開

全員悪人 全員暴走 《関東【山王会】 vs関西【花菱会】》の巨大抗争後、大友(ビートたけし)は韓国に渡り、日韓を牛耳るフィクサー張会長(金田時男)の下にいた。そんな折、取引のため韓国滞在中の【花菱会】幹部・花田がトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。これをきっかけに、《国際的フィクサー【張グループ】 vs巨大暴力団組織【花菱会】》一触即発の状態に。激怒した大友は、全ての因縁に決着をつけるべく日本に戻ってくる。時を同じくして、その【花菱会】では卑劣な内紛が勃発していた......。 『アウトレイジ 最終章』2017年10月7日(土)全国ロードショー 公式サイト:http://outrage-movie.jp/ ビートたけし 西田敏行 大森南朋 ピエール瀧 松重 豊 大杉 漣 塩見三省 白竜 名高達男 光石 研 原田泰造 池内博之 津田寛治 金田時男 中村育二 岸部一徳 監督・脚本・編集:北野 武 音楽:鈴木慶一 配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野 ©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会


◆アウトレイジ最終章 感想◆


評価/オススメ:★★★★★
(3作品を通しての評価になります)


この作品ジャンルは?:
クライムサスペンス

オススメしたい人は?:
全ての働くサラリーマン

印象を一言で?:
今作は『ドラマ』・・・だとっ。

グロテスクですか?:
今回は北野バイオレンスが極めて控えめです(注意:過去2作比)
それでもやることはやっています(笑)

過去の作品は観るべき?:
「アウトレイジ」、「アウトレイジ・ビヨンド」あっての、アウトレイジ最終章です。是非まだご覧になっていない方は地上波などで描写がカットされていない完全版を鑑賞してから足を運ばれると良いでしょう。


◆synopsis◆


山王会と花菱会の巨大抗争後、大友は韓国に渡り、日韓を牛耳るフィクサー張会長の下にいた。

そんな折、取引のために韓国に来た花菱会幹部の花田がトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。

これを発端として国際的フィクサー・張グループと巨大暴力団組織・花菱会が一触即発の状態となってしまう。

発端となった事件に激怒した大友は、全ての因縁に決着をつけるべく日本に戻ってくる。

時を同じくして、その花菱会では内紛が勃発していた・・・

※公式HPより

※ネタバレ防止に付き、一部文月加筆訂正


◆comment◆



本日、2017/10/7より公開です。

文月はアウトレイジ、アウトレイジ・ビヨンドともに年に数回は観直すほどにこのシリーズが好きなのですが・・・・

・・・・うむむ!?

本作は『怒号の応酬』も『北野バイオレンス』もとても控えめ。

複雑に交錯したドロドロの人間関係の中で誰がいつ殺害されてしまうのか?
そういう方面でとてもハラハラしてしまう、シリアスな『ドラマ』になっていました。


「やぁってやっから、道具持って来いコノヤロ!」

「ウチの若いのよくも『取って』くれたなコノヤロー」


「口開けこの!治してやっからよ」

「指出せオラーーーーー!バズン!!!」

「舌出せ!出せって言ってんだろ!」

「おい『道具』出せ!」

「やれ!チンピラ!撃てよ!」

「オイ、舟木。テメェも同じようにしてやるからよ、見とけコノヤロ!ぎゅいーーん!」

「おい、元の親分の所行こうぜ・・・。あ?『大友さん』だろコノヤロ!」ドゴッ!


「野球しよっか?」

など、伝説的な台詞と極端なまでの暴力描写で世間を騒がせたアウトレイジ。

この台詞で、シーンが連動されたア・ナ・タ。
フリークですねぇ。

アウトレイジ、アウトレイジ・ビヨンドは言ってみれば『バイオレンス』を娯楽にしてしまった北野監督独特のブラック・ユーモアたっぷりの作品でした。

わたしがこの作品をものすごく好きなのは、

「組織、社会、コミュニティ」

という、利害や力関係が発生する場所で生きなければいけない人の悲哀が凝縮されているからです。

つまり、アウトレイジという作品は『ヤクザ』というアイコンに収められた『社会風刺』なのです。

どこか自分とは関係ない場所の話ではないのですぞ。

キャッチコピーの「全員悪人」というのは実はすごく深くて、
「観ているあなたは果たして善人ですか?」と問いかけられているのです。

黙々と上からの、そして組織から受けている義理を通す人。

自分の出世や責任逃れのために、誰かを利用する人。

笑顔で接しておきながら、実は裏で別のやつと繋がっている人。

上の指示という言葉を大義名分にしてなんでもやる人。

虎視眈々と相手を蹴落とすことを狙っている人、狙われている人。

そして犬ころの様に誰かを慕い、信じてついてくる人。

このアウトレイジ3部作に登場する人物はもの凄くコミカルにデフォルメされた悪人達です。

そして、自分を、自分のまわりをよーーーーく、目を凝らして、冷静に見つめてください。

多かれ少なかれ、登場人物のキャラクターや、立ち振舞い、考え方、価値観が重なって見えませんか?

いやいや、そんなやつはいないよ。

そう言える人が果たして何人いることやら。

これは皮肉でもなんでもなく『生きていくって、そういうもの』なのだとわたしたちにノックしている北野武監督からのメッセージなのです。

彼らの放つ怒号、応酬、暴力が観ている側をどこかスッキリさせるのは、取りも直さず

普段自分が抑えてできないことを代わりにやってくれているからですわ。きっと。


――そんな訳で、最終章と銘を打たれた本作ではどれだけ「スッキリ」できるのか(オイオイ(汗))を期待してスクリーンに向かったのですが・・・・


本作は暴力ではなく
「群れを離れた一匹の狼(=大友)の悲哀」
がメインのお話になっていました。

あんまり痛くないので、門戸が広まったかも(笑)

北野監督が「バラバラに見えているけど、3つでひとつの作品」と公開前のインタビューで答えていました。

本作のメインテーマは「ケジメ」なのです。

起承転結の「結」

そして見えてきた「大友」という男は、過去の北野作品で描かれた「不器用だけど懸命に生きる男」達と共通している、かっこいい男だったのです。


まず、本作を楽しむためには登場人物達が置かれた状況と主要な人間模様を知ったほうが良いでしょう。


◆大友が属する「張グループ」

(画像クリックで拡大されます)



◆そして今作で敵対するご存知「花菱会」

(画像クリックで拡大されます)



※ちなみに、ピエール瀧さん。
本作でのコメディ部分というか笑える要素はほぼ彼に集約されています。
大島渚監督の『御法度』のトミーズ雅さん並にいい味出してます。


◆過去作からの因縁の関係はこちら

(画像クリックで拡大されます)



◆大友という男が背負った『ケジメ』

そして、本作では過去の作品への配慮も忘れていません。
「ケジメ」とはアウトレイジ・サーガ全体へのケジメなのです・・・

(画像クリックで拡大されます)



◆大友を慕う若い衆

大友という男には不思議な魅力があって、作品全てに彼を強烈に慕う若い衆が登場します。
しかしながら、その若い衆達の末路も作品の熱度を上げる強いエッセンスになっていました。

(画像クリックで拡大されます)



これが作品のフレームになります。

・アウトレイジ最終章を楽しむポイント①


ますは「舎弟愛」というが本作品の見どころです。

大森南朋さん演じる本作の若い衆である「市川」。

文月としては、この市川は過去椎名桔平さん演じた「水野」、中野英雄さん演じた「木村」、ふたりの良いエッセンスを見事に受け継いだとても好感が持てる新キャラクターだったとえらく感激しましたわぁ。

激しすぎず、前に出すぎず、ひたすらに大友に従う姿がもう・・・・

それだけではありません。
悪人ながらも縦の主従関係がしっかりとしているのは、大友と市川だけではないので、
各シーンでどのラインが絡み合って動いているのかが解るととても楽しいです。

それでも、親子でも兄弟でもないのに、大友という男に惚れ込んだ市川の真っ直ぐさは萌え要素の重要な一つです。

大友と市川に共通するのは「息が詰まりそうな組織の枠より、自分の信念を通す」生き様でした。

自分がここまでできるのか?と自問自答してしまうほどの・・・


まぁ、語弊があるでしょうが、コジマプロダクションの小島秀夫監督が独立した時に集った人たちを観ているような気持ちになりました(小声)下記、リンクを貼ります。

わたしだって、ゴミ掃除係でもいいので馳せ参じたいのですが、無理だなぁ。

・アウトレイジ最終章を楽しむポイント②


『裏切り』の連鎖

冒頭でアウトレイジ最終章にハラハラさせられたと書きましたが、それは『一体誰を信じたら良いのか、大友の思惑すら解らない』ところにあります。

単純に「張グループ vs 花菱会」という構図ではないのです。

花菱会も一枚岩ではない、そして花菱会に後見されている山王会も、大友が属する張グループでさえも、しょーーーもないエゴが渦巻くドロドロの人間模様を展開します。

このあたりは北野監督お得意のコントを観ているようで、実際の鑑賞中もみなさん所々で笑い声が上がっていました。

解っちゃいるけど笑ってしまう、古典落語の境地ですな(笑)

しかし、ラストシーンを迎えるまで、誰がどの瞬間に「生命(タマ」取られてしまうのか全く油断できませんでした。

誰もが同じことを考えていて、状況をどれだけ自分の有利に持っていくか。

人間関係も、仕事も、極端な話ですとこれの繰り返しです。

その意味で、裏切りの連鎖とはフィクションの中でだけ展開するものではありませんぜ。


・アウトレイジ最終章を楽しむポイント③


それぞれの「ケジメ」

大友、張グループ、花菱会、山王会、警察と今回の事件を決着しなくてはならないのです。

互いに納得できる着地点、いわばそれぞれが落とし所をどこにするか、その腹の探り合いは内紛をコントロールしている誰もが考えて行動しています。

北野監督が描く美学とはあるひとつのベクトルに一貫して向けられていて、それが作品に漂う悲哀を一層深めているのですが、
本作品ではさらに、
それぞれが落ち着く所に落ち着いて
「一番悪い奴が天下を獲ったように見える」
収め方は、いずれまた悲劇は繰り返すのだろうとちょっぴり続編を期待してしまうような気分にさせますな。

でもアウトレイジ、アウトレイジ・ビヨンド、アウトレイジ最終章と3作品全てを観ている人はもちろんのこと、北野作品を愛している方ならば後半でピンと来る方も多いかもしれません。

アウトレイジというひとつの物語に「ケジメ」をつけるのであれば、
どうしようもなく決定的な終わりを迎える必要があるのでした。

群れを離れた狼の最後の咆哮を、是非ご自分の目でお楽しみください。

わたしはラストカットでどうしようもなく切なくなりました。


2017年映画鑑賞 165本目

◆overview◆


・原題:アウトレイジ最終章 2017年公開
・上映時間:104分
・監督:北野武
代表作:『brother』『ソナチネ』
・脚本:北野武
     

・メイン・キャスト
ビートたけし
西田敏行
大森南朋
ピエール瀧
松重豊
大杉漣
塩見三省
白竜
名高達男
光石研
原田泰造

 
  [映画感想]

2017/09/30

ドリーム 感想 ~ゴージャス、デリシャス、デカルチャー~【映画レビュー】

映画『ドリーム』予告A

映画『ドリーム』公式アカウント。 2017年 第89回アカデミー賞3部門(作品賞、助演女優賞、脚色賞)ノミネート 宇宙開発史上の偉業を支え、新しい時代を切り開いた知られざる3人の女性がいた―― 【2017年9月29日(金)全国ロードショー】 ▼公式Facebookページ https://www.facebook.com/20thFOXjp/ ▼公式Twitter ...


◆ドリーム 感想◆


評価/オススメ:★★★★★

この作品ジャンルは?:ヒューマンドラマです。

オススメしたい人は?:すべての働く人達。何かを成し遂げたい目標がある人。

印象を一言で?:本年度屈指の勇気の出る映画!

重い話ですか?:実は宇宙開発というのは作品のエッセンスのひとつで、見どころはいろいろな偏見と戦う女性たち、人間たちの物語。テーマは重いですが、天真爛漫なキャストたち明るさがそれを見事に中和しています。

◆synopsis◆


東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。
ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。

リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。

技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。

幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、白人男性だらけである職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。

それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。

※公式HPより

※ネタバレ防止に付き、一部文月によりカット

◆comment◆


日本では2017/9/29より公開。文月は幸運にも公開初日に鑑賞できました。
監督はわたしのおすすめ作品のひとつである
『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィ。

→文月の過去の紹介記事(この頃はまだ短いポスト)
『ヴィンセント~』で不覚にもおいおいと泣いてしまって以来のファンです。

よって、今回の作品は不安もなにもなく安心して劇場に足を運べました。

不安、といえば、この作品は邦題を巡って一悶着あったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
わたしも以前の投稿で言及しました。

→文月の過去の紹介記事

本作はマーキュリー計画を題材とした作品。

つまり、『ライトスタッフ』達を支えた多くの人達、とりわけ理不尽なしがらみを乗り越えて業績を残した女性達の物語です。

光と陰。

言ってみれば、ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリーの様に、これまであまり語られなかった外伝として捉えることもできますが、実話であることが本作のミソです。

よって、わたしは本作を鑑賞した後に改めて『ライト・スタッフ』を観てみるつもりです。




『ライト・スタッフ』予告編

The Right Stuff (1983) Official Trailer - Ed Harris, Dennis Quaid Movie HD

The Right Stuff (1983) Official Trailer - Ed Harris, Dennis Quaid Movie HD Subscribe to CLASSIC TRAILERS: http://bit.ly/1u43jDe Subscribe to TRAILERS: http://bit.ly/sxaw6h Subscribe to COMING SOON: http://bit.ly/H2vZUn Like us on FACEBOOK: http://bit.ly/1QyRMsE Follow us on TWITTER: http://bit.ly/1ghOWmt The story of the original Mercury 7 astronauts and their macho, seat-of-the-pants approach to the space program.


●ドリームとは?

さて、本作が描いているのは、マーキュリー計画の最大の難所であったアメリカ初の有人地球周回飛行が成功するまでの過程です。

しかしながら、意外と扱っているテーマは重いのです。

オープニングからいきなりそのものずばりの人種差別女性蔑視から始まり、
職場でのしがらみ嫌がらせ困難な課題への挑戦。

仕事を通して、そして私生活を通して、浮き上がっては頭を悩ませる現実という壁。

生きること≒働くこと というのは多くの人が共通して抱えているものですが、

この作品も『誰もおそらくが毎日感じていること』を映し出しています。

何かすごいことをした遠い国の本当にいた人のお話、という目だけで観られる人は少ないし、逆にもったいないですよ。

こう書かなくても、自分の生活とダブってしまう方は多いのではないのでしょうか(笑)


●主軸となる3人のレイディはこちら↓

(画像クリックで拡大されます)

3人とも、優れた才能を持ちながら『何かを耐えている』姿は印象的です。

彼女たちが身内だけに見せる素の姿と外での『ツン』とした態度。
どうしてそんな態度を取るのかはまさしく、
彼女たちが『耐えている』ものに起因しています。

●そんな彼女たちと関わることになる人達はこちら↓

(画像クリックで拡大されます)


面白いことに、彼らの姿勢、見識が『2対2』で別れているのも見どころです。


誰もが抱えているものと同じ、と書いたのには理由があって、

有色人種である3人の主人公だけでなく、彼女たちと関わる彼らも悩み、苦しみ、耐えているからなのです。

性別や人種など関係なく、自分の才能を活かせるところを掴み取れるということは、理屈なようで理屈でない、とんでもない事なのです。
多くの人が、何かを諦め、何かに苦しんで過ごしている。

わたしだって同じです。

ただ、今よりもはるかに不自由で理不尽なしがらみの中で、決して諦めなかった人たちがいた。

簡単に一括りにはできないし、映画として造られた以上、作中彼女たちが直面する差別という名の現実は、本当はもっと凄まじいものであったはず。

キング牧師のあの時代なのです。

それでもこの作品を明るくしているのは最高に明るくて、そして強く、デカルチャーでタフなレイディ達の姿に他なりませんな。

自分の居場所は、自分で勝ち取るもの。

そして居場所は自分でつくるもの。

つらい状況は誰にでも起こり得て、そしてその中で再起不能に陥ってしまうこともあるのだけど、

そんな時でも劇中のキャサリンのように背筋を伸ばし、

ドロシーのように図太く学び、

メアリーの様に不敵に挑む。

『ドリーム』という邦題を考えたライターさんなり、配給会社さんとしては、

彼女たちが魅せた不屈の姿に『古き良き健全なアメリカン・ドリーム』(頑張って金持ちになりましたというのではない)を見たのだろうなと考えました。

ま、『新感染』とかいう、座布団全部持っていかれそうなのボロクソタイトルと比べれば、まあアリですな。
(誤解のないように。『TRAIN TO BUSAN』はマ・ドンソクのタフガイぶりに最高に燃えた口です。はい。わたしがケチを付けているのはこの邦題。何が「新しい感染」なのか、
詳細なレポートを提出してもらいたいくらい個人的には憤ってます)


人類初の有人飛行を成し遂げた人。

アメリカ人初の地球周回軌道飛行を成し遂げた人

その陰に、アメリカの黒人女性初の偉業を成し遂げた女性がいた。

エンドロールが「良かったね!めでたし、めでたし」だけでなく
しっかりと彼女たちにフォーカスして終わります。

観る側としては、それをしっかりと心に刻むことで真のエンディングを迎えられることでしょう。


●ちなみに

IBMの特設サイトには、主人公の彼女達にフォーカスした動画もあって、改めてすごいことをした人達なんだなと脱帽しちゃいます。興味のある方は御覧ください。


しかし本作は『走る、走る』

観客席から立ち上がって応援したくなるくらい、走る。

象徴的なシーンなので必要な描写なのですが、

あたし、仕事中にあんなに走ったら、すぐに早退します。


2017年映画鑑賞 160本目


次回予告、『コノヤロー!バカヤロー!』なあの映画です(笑)

◆overview◆


・原題:Hidden Figures 2016年アメリカ公開
・上映時間:127分

・監督:セオドア・メルフィ
代表作:『ジーサンズ はじめての強盗』『ヴィンセントが教えてくれたこと』

・脚本:セオドア・メルフィ アリソン・シュローダー
     
・メイン・キャスト
タラジ・P・ヘンソン
オクタビア・スペンサー
ジャネール・モネイ
ケビン・コスナー

2017/09/16

エイリアン コヴェナント 感想 ~全ての生命に祝福を~【映画レビュー】

映画『エイリアン:コヴェナント』予告D

"映画『エイリアン:コヴェナント』公式アカウント。 巨匠リドリー・スコットが解き明かす"エイリアン誕生"の想像を絶する真実! 【2017年9月15日(金)全国ロードショー】 ...



◆エイリアン コヴェナント 感想◆


評価/オススメ:★★★★★

(もっとあげても良い)

この作品ジャンルは?:
SFホラーです。

オススメしたい人は?:
リドスコのエイリアンファンだけでなく、あえて、子供を持たれている方すべてにオススメしたいです。

印象を一言で?:
エイリアンが怖いという映画ではないです。違うものが怖い。

グロテスクですか?:
描写もさることながら、全体的にダークな印象。

前作は観たほうがいい?:
『プロメテウス』を観ていないと、一番コアな部分が恐らく本作だけでは解らない物語です。是非前作を復習されてから鑑賞ください。

◆synopsis◆


宇宙移住計画を実行するために地球を旅立ったコヴェナント号は、
コールドスリープ中の男女2,000人を乗せて、
植民地と成り得る惑星を目指していた。

しかし、あるアクシデントが発生し航行に重大な支障がでてしまう。
コールドスリープから目覚めた主要クルーらによる修復作業のなか、
謎の電波を受信する。

本来であればあり得ないことではあるが、航路を変更して
電波発信元に向かうコヴェナント号とクルー達。

そこは本来の目的地よりもはるかに地球に酷似した環境の惑星だった。

調査に赴いたクルーたちは、そこで奇妙な形をした建造物の残骸を発見するが・・・・
開けてはならない箱を持つあるものが待ち受けていた。

※公式HPより

※ネタバレ防止に付き、一部文月加筆訂正


◆comment◆


2017/9/15 日本では昨日から公開です。

あぁ、始まった。すべての絶望がここから始まったのだ・・・

本作のキービジュアルに書かれています
『絶望の、産声』というコピーには、、、、、
お見事という言葉しか浮かびません。
この一言には、いろいろな意味が含まれていますよ。
ライターさん、本当にお見事。脱帽です。




映画鑑賞後にもう一度見返しましたが、わたしは唸ってしまいました。


うむ。
映画やドラマを鑑賞していて不快な感覚になることは早々ないのですが、
久々に悪寒と「気持ち悪さ」を感じた文月です。

本作を紹介するにあたって、どこに力点を置くかで書かせてもらう文章が
まったく違う方向に行ってしまうのです。

あのバリバリの予告編から多くの方が想起されるのは、それこそリドスコが監督ではありませんが「エイリアン2」であったり、その次であったりなのではないか?と考えます。

もちろん、後述しますがそういう面で感じる視覚的な恐怖も本作の魅力のひとつです。
(わたしが感じた「気持ち悪さ」を猛烈に押し上げた要因でもあります)

しかし「プロメテウス」から本作、そして「始まり」へというリドリー・スコットが描いた3作品すべてをよくよく考えてみると、「生命」というものの美しさというものを人間がものすごく歪めてしまっているのではないか?ということを感じました。

この作品、結局何だかよく解らんけど、とりあえず気持ち悪かった。
と観られた方の感想が割れるとすれば、「グロいだけ」と言われかねないリスクもあるのですが、そこから何かを掬い上げて、この映画をより楽しんでもらうことができればと。

残酷描写だけを楽しむのはもったいない作品ですから。

映画って、結局はどんな風に楽しんでも良いものなのですけど、
わたしとしては映像の裏側にあるものを考えながら観るのも一興ですよと言うことが言いたいだけなのです♫


●エイリアン コヴェナントとは?

さて、エイリアン コヴェナントとはどういう物語かと言いますと、
いわゆる「どうしてそうなった?」を追いかけるストーリーです。

そしてこの作品の真の主人公は申し訳ありませんが、リプリーを彷彿とさせる
キャサリン・ウォーターストンだと思ったら大間違いになります。きっと。
もちろん彼女が成すのはこの話をリードしていく重要な役柄です。
そして素敵です。でも違うのです。
彼女すら、本作においては添え物のひとつになってしまっています。

さらに見逃してはいけないのは前作とも密接に関わってきますが「プロメテウス」というタイトルの意味だと考えます。
わたしは
「本当は誰がプロメテウスだった(あるいはプロメテウスになろうとした)のか?」
「プロメテウスはいったい何をしたのだろうか?」
「コヴェナント/covenant」とは何を意味するのか?
を自分なりに紐解くことで、リドスコが何を訴えたいのかが掴めたように考えます。

すべてを握っているのは、別の存在なのです。
(鑑賞される前の方のために、この核心的な部分のネタバレは致しません)

と、小難しく書いても「プロメテウス」をしっかりとご覧になった方はすぐにピンと来るのでご安心ください。

エイリアン:コヴェナントとは「もう始まっている物語だったのです」

人類の、そして、生命の起源が何処にあるのかが解明されていなくとも、
わたしたちは子孫を残すことができるし、なおかつ「新たな生命」を造りだすことすら可能になっているのです。

何の因果か、鑑賞後にわたしは「エクス・マキナ」を本作と共通している部分があるとリンクさせて考えてしまいました。
※エクス・マキナの過去の紹介記事

どういう経緯であれ、産声をあげたものに等しく宿るものが「生命」
その価値に差があるのか?優劣があるというのか?
造られた生命は誰のものなのか?

生物は少しでも長く生き残り、子孫を残していくために、あらゆることをするもの。
進化もそのために必要なプロセスなのです。

たとえ別の種を利用し、取り込み、もしくは滅ぼすことになったとしても、
結果として姿形が始まりと変わったとしても、
自分たちの「種の保存」を優先するもの。

それが叶わなくなった種は、淘汰されるのが運命。

それが「創造主」たる何者かが等しく定めた「生命の性」

リドリー・スコットはわたしたちに、そんな「生命の性」に触れることができるようになった人類に対して本作を通じていくつかの問題提起をしていると考えます。

・「ヒト」に創造主としての資格があるのか?

・「ヒト」の主観を、立場を変えて見てみると、どのように映るのか?

これは単純に力を誇示する強者の姿を示しているのかもしれません。

新たな生命が「完璧な生命」であるとは決して限らない。

恐らく「完璧な生命」とは、ヒトの美意識などでは計り知れない姿をしている。

もっと言えば「種の保存」のみを突き詰めた「完璧な生命」の姿≒今のヒトの所業とは本作で主人公達を襲うクリーチャーと同じではないだろうか。

他の生命から見た場合、ヒトであるわたしたちの姿も行為も、グロテスクであり、恐ろしいほどの脅威なのだろうな。

全知全能の神ゼウスですら、プロメテウスの所業を止めることはできなかった。
神であるプロメテウスですら、善意で成した行いで過ちを犯した。
神という種ですら、完璧ではない。ひとつの意志など持ち得ない。
それぞれに思考も価値観も優先するものも違う。
ましてやヒトは神ですらないというのに、生命の性に逆らい、新たな生命すら身勝手な理由で造り出す。忠実なる下僕として。

造られた側からしてみれば、生命の進化の鎖の外にヒトによって置かれてしまった理不尽さに気が付かない訳はありません。

そして、自らの血と肉を使い、種を残すことができないのであれば。。。

始めから「ヒト」の不完全さを理解しているのであれば、
その不完全さを埋めてしまえば「完璧な生命」ができあがる。

自分はそれができる。それができるようにすべてを定義され、どういう価値観であっても事象を理解できる存在なのであるから。

その手段も見つけた。なんと美しく、強い種であろう。

不完全な自分の創造主≒父は愚かで脆い。

その過ちを正すことで己が抱える不完全な哀しみを埋めようとした。

逆説的にそれが創造主の願いを叶えることになるし、己も創造主になることができる手段だったのです。

わたしは「あの存在」の狂気の所業の根幹にはこんなものがあったのではと感じたわけです。

名前って大切。わたしの中では、ひとつにつながりました。
(変な邦題付けられなくてよかった)

そういう訳で本作で上げられる「絶望への産声」の扉を開いたのは、実に皮肉な存在であり、元を正せば、○○だったのでした。
(ネタバレの為伏せ字)

本作のクリーチャーは、種の進化と保存を貪欲に行おうとしているだけなのです

ホント、考えてみれば本当に気持ち悪い化け物です。

寄生した宿主の遺伝情報を的確に取り込み、「その姿」すら変えていく。

ヒトに寄生すれば、ヒトの姿に。それ以外に寄生すれば、それ以外の姿に。

後に派生した「エイリアン」というコンテンツの設定もきちんと拾うリドスコ。
(リドスコが完璧なまでに繊細であることを、いまさら書く必要はありませんので省きます。リドスコは『世界』を作ってしまう方なのですから)

怖いよねぇ、グロいよねぇ、身体バラバラになっちゃうし、『あり得ない勢い』だし。
と冒頭にも書いたように、純粋なSFサバイバルホラーとしても、きちんとセオリーを踏んでいるのでドキドキハラハラは堪能できます。


それでもわたしは「どうしてこんな事が起こってしまったのか?」を探っていく過程で感じた恐怖が勝りました。


わたしにとっては、正当な理由に基づいた狂気が、己が心を通わせた精神的な『母』であり『恋人』に対して示した全身全霊の『愛』のカタチが相手も「完璧な生命」にしてあげることだったというのが、一番気持ち悪かったのですが、それも「ヒト」の主観なんだろうなぁ。

あれ真っ白なビジュアルも強烈だったし。ましてや『ものすごい可能性』を秘めた狂気のやり取りをしていたのが、ある意味斬新でした。
恍惚さすら感じた、あのシーン。あー、怖い(汗)
だけど、あれって・・・・あの人でしょ!?!?!?!


完全な狂気に支配された『方舟』が、今、『始まり』へと旅立ちます。

この恐怖。是非ともご堪能ください。

2017年映画鑑賞 153本目

◆overview◆

・原題: Alien: Covenant 2017年公開
・上映時間:122分
・監督:リドリー・スコット
代表作:『エイリアン』『ブレードランナー』
・脚本:ジョン・ローガン
ダンテ・ハーパー

・メイン・キャスト

マイケル・ファスベンダー 
キャサリン・ウォーターストン
ビリー・クラダップ
ダニー・マクブライド
デミアン・ビチル
カルメン・イジョゴ
ジャシー・スモレット
キャリー・ヘルナンデス
エイミー・サイメッツ
ナサニエル・ディーン
アレクサンダー・イングランド
ベンジャミン・リグビー
ウリ・ラトゥケフ
テス・ハウブリック

2017/07/01

ディストピア パンドラの少女 感想 ~子供がまだ『喰って』る途中でしょうが!~【映画レビュー】

[映画感想]

◆ディストピア パンドラの少女 感想◆


評価/オススメ:★★★☆☆

◆synopsis◆


真菌の突然変異が起き、感染した人間は思考能力をなくし、生きた肉のみを食すハングリーズと化した近未来。
爆発的に蔓延したその奇病により、人類は絶望の危機に瀕し、残った少ない人々は安全な壁に囲まれた基地内での生活を余儀なくされていた。
そんな中、イングランドの田舎町にある基地ではウィルスと共生する、二番目の子供たちセカンド・チルドレンの研究が行われていた。
その子供たちは感染しているにもかかわらず、思考能力を維持し、見た目は人間の子供そのものだった。
彼らから、ワクチンを作り出そうと模索する中、子供たちの中に高い知能をもった奇跡の少女メラニーが現れる。
彼女は人類の希望となるのか―絶望となるのか。

※公式HPより

◆comment◆



すみません。
邦題変更してくださーーーい!!!
配給会社がトンチンカンなタイトルとかネタバレに直結する副題をそのまんまつけてどないすんねん(汗)

2017/7/1 日本では本日から公開です。
それにしてもディストピアって、誰がメインタイトルにしてしまったのか。
副題のパンドラの少女も、なんで加えてしまったのか・・・・
あぁ、これ原作の邦訳版のタイトルなのか・・・・。
そもそも原題を紐解くと、そういうことになるのかぁ。。。。
でも、入れなくていいよなぁ。。。。
だってこれからチケット買って(もしくはそれなりの手続きで利用料金払って)観るんですよ。

もっと言うとタイトル決定した人たちは『ディストピア』って、言葉ちゃんと理解しているのかなぁ・・・・。
もしくは製作陣にも確認したのかなぁ・・・
あえて邦訳版のタイトル省くとか配慮したほうがよかったのに。
そのままポンっとのせちゃったのだろうけど。


この作品はディストピアではなく、人類の終末を描いた物語です。はい。
もっともっと、言ってしまうとゾンビというコンテンツは出てきますが、ゾンビ作品には入れられません。
たぶんホラーとは違う方向性のお話ですよ、コレ。

もの凄くこじつけて、冒頭の導入がディストピアらしく(これでも屁理屈になるかぁ)映らないこともないですが、
それとも・・・・エンド??
だけどなぁ、何度思い返しても「ディストピア」とは結びつかないんだよなぁ。
ワタクシの理解力がないのかなぁ。。。。
誰にとってのディストピアなのかなんだよなぁ。
あの子らが言ってみれば管理されていたのはむしろ正当な理由だものなぁ。

こういうぶん回し感はむしろ『メッセージ』(本年日本公開 原題:Arrival)にも近いものを感じます。
(宇宙人との遭遇という出来事を通して、実は本題が別の所にあったという意味で)

このあたり、鑑賞後に肩透かしをくらう方も多いでしょうからご注意ください。


→文月の『メッセージ/Arrival』過去の紹介記事です。


ワタクシも『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04年)や『28日後』(02年)『28週後』(07年)の際に「これこれ!!」って感じた絶望感や終末感にトリップするつもりでしたが、事前に原作をきちんと読んでどんな話かを理解しておけばよかったと思いました。
まぁ、楽しみだと感じた映画ほど、あえて情報収集しないで臨むのが好きなので、仕方がないですな。自業自得です。

ブラピたちがゾンビ小説の衝撃的傑作「WORLD WAR Z」の原作をこねくり回した結果、全然違う話やんけ!としてしまった事例もあるので、いい意味でそちらを期待していたのですがね。文月は断然「WORLD WAR Z」原作派です。原作は読み返しすぎて擦り切れてるから今月読書用に新しいの買います。

ところで映画に限らず、物語のタイトルって本当に大切だと思います。。。。
タイトルや副題で物語のネタバレをしてしまうのはどうかなぁ。

このあたり、ワタクシも個人的につぶやいてきましたが、最近特にひどくないですか?
ちょっと騒動になったのは秋に公開予定の「ドリーム 私たちのアポロ計画」が記憶に新しいですね。
※参考記事(リンク貼ります) ITメディア様
エヘン、あえてお話します。

原作をすでに読まれた方にとっては、答え合わせの作品として観ても良いかなぁという感じです。
そして原作に触れていない方は、原作をご覧になることをオススメします。
さらに加えると「パンドラ」っていったい何を意味しているのかご存じの方はもう・・・・ぶ、ぶべら!!!!

むしろ原作を読まれたほうが、驚きも、考えさせられるものも多いのではないでしょうか?
このあたり、トンチンカンなメインタイトルと副題を決められた方たちが、
公式HPの情報開示の仕方も含めて自ら結末をバラしているようなものなので、致し方ないです。

※どうでもいいですが、セカンド・チルドレンとか「アスカ」ではありませんので
ご注意を。(おそらく原題ではチルドレンズだろうな)

それではこの物語って何も魅力はないの?
いいえ、メッセージは確かにあります。

この物語を象徴する言葉は「淘汰」であり「選択」というワードです。
描かれる崩壊した世界はそのままモラルや善悪が混沌としてしまった今を象徴していいて、それでもその混沌の中から生まれた「選択(決断)」の是非がキーポイントになります。

結局のところ、人類に火をもたらしたプロメテウスに激怒したゼウスが人類に厄災をもたらすために女性をつくり「すべての贈り物」(容姿、能力、魅力など、そしてピトス)を与えられた彼女が何をしてしまったのか?
という神話を下地に、「生き残る」という当たり前の生存本能を持った「次世代の子ら」がどんな「選択」をしたのか?
わたしたちは何を彼らから得ようとし、彼らは何をもたらしたのか?

今年度わたくしが個人的に見てきた映画は結末は違えど概ね同じようなベクトルを向いているのかなぁと感じます。
「パッセンジャー」然り、「メッセージ」然り、「ローガン/LOGAN」然り、そして本作。

「淘汰」と「選択」という言葉を軸にこの作品を観ることができるのであれば、一見地味だけど実は魅力的な物語であると受け止めることもできるのではないでしょうか?

ラストに至るまでのイベントは逃避行を続ける小さなグループ内での出来事というカタチを取りながら、下地になる神話のエッセンスが濃厚に見え隠れします。
もちろん、人類の命運を担うほどの研究をしているという設定の割に脆弱過ぎる環境に彼らがいることや、
最大のキーポイントである「この物語のパンドラの箱」が、確かに幻想的ではあるけれど「あんなものなの?」とツッコミどころもたくさんあります。

あれが何なのか解っているなら、世界はなんで放置してんの??
絶対解明されてるだろーが!!!なんか手を打てるでしょ!!!

と、絶対に思うだろうし。

セカンド・チルドレンを隔離して研究しているのは解るけど、人類が滅亡するかしないかの切迫した状況で、彼らを「人間的に育てる」→研究に「人道性」が介入し→結果、研究が瓦解してしまう・・・・
というのは有り得そうだけど、現実味が薄いのでは?と思います。
そこまで逼迫した状況ならむしろ問答無用でしょうな。

しかしながら、徹底してギリシア神話を下地にしている本作。
この象徴的な説話(日本語副題のあれです)の通り、重要な選択(決断)を迫られる3人の主要人物が結末からすると『全員女性』でしかもそれぞれ『若年・成年・熟年』と世代が見事に別れているのには唸りました。

ゾンビホラーだと思って観てしまうとこの物語の本当のところを観るのは難しいです。
文月も「なんだよこれ??全然怖くないし」と呆然とした口です。
この物語はホラーではありません。
そしてディストピアでもありません。
時代も世代も大きな流れの中でどうしようもなく移り変わっていく、どんなにあがいても淘汰されていく、どれぞれの世代がそれぞれ最善と思われる選択を迫られ、その結果もたらされるものをどう受け止めるのか?
そんな思考実験をした物語なのです。

人類に繁栄をもたらした『火』が象徴するのは『力』です。
その『火』がパンドラに渡った時・・・
この物語の最大の皮肉はそこです。
ラストシーンに希望を見いだせる人がいたとしたら、それはおそらく「次世代の人」なのでしょう。
少なくともワタクシには希望は見いだせませんでした。
ディストピアではなく、彼らは桃源郷を作ってしまったのだと。
むしろそういうタイトルにしたら唸ったのだけど。


2017年映画鑑賞 104本目

◆overview◆


(原題:The Girl with All the Gifts)2016年公開(日本公開2017/7/1)
上映時間:111分
・監督:コーム・マッカーシー
代表作:SHERLOCK Season3 三の兆候など
・脚本/原案:マイク・ケアリー

<メイン・キャスト>
セニア・ナヌマ
ジェマ・ア—タートン『アンコール!!』(2013)
グレン・クローズ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
パディ・コンシダイン『チャイルド44 森に消えた子供たち』(2015)


2017/06/17

リベンジ・リスト 感想 ~男なら、クローゼットの奥に人には言えないものを隠しているもんだ~【映画レビュー】

[映画感想]


◆リベンジ・リスト 感想◆


評価/オススメ:★★★☆☆
(90年代のノリが好きなら★★★★★!!!)

◆synopsis◆


目の前で強盗に妻を殺害された失業中の中年男。
容疑者は捕まるが、裏社会と繋がっている悪徳警官によって釈放されてしまう。
事件は闇に葬られるかと思われた・・・・

理不尽な社会と、妻を守れなかった己の無力さへの怒りが,、捨てたはずの過去を呼び覚ます。
善良な市民として暮らす男はかつて数々の殺しを請け負ってきた特殊部隊の元工作員だったのだ。
封印していた殺人術を総動員し、かつての相棒とともに復讐に手を染めていく。
やがて妻の死に隠された巨大な陰謀を知ったとき、男の怒りは臨界点を突破する―
お前もやはり悪なのか!!

※公式HPより
※一部文月加筆訂正

◆comment◆


懐かしい。
ただひたすらに、懐かしい。
僕らの知ってるアクション映画って、もともとこういうもんでした♫

日本では2017/6/17 本日から公開です。

『スターウォーズ』『アベンジャーズ』が幻想的なアクションなら、
『マトリクス』『リベリオン』が演舞的なアクションなら、
『ジョン・ウィック』は魅せるアクションなら、
本作『リベンジ・リスト』は90年代に大量に出回ったテイストがたっぷりの『解りやすい』アクションです

そんな感覚に囚われても仕方がない。
監督のチャック・ラッセルは『マスク』(95年)『イレイザー』(96年)『ブレス・ザ・チャイルド』(01年)とそっち方面のお方ですものね。

主演は「また紹介記事とかに完全復活とか勝手に書かれているけど、そんなことないよ。自宅が飛行場すんごいセレブ」ジョン・トラボルタ。
本作のムードメーカー、ジョン・トラボルタの相棒役にはクリストファー・(ハーディー大佐)・メローニ。
ふたりとも実はすごいんですという見せ場がキチンと用意されていて(それも90年テイスト)、
このふたりだけでお腹いっぱい感があります。

若いイケメンよりも、渋いおじさん以上のヒーローって最近多い。
アイアンマンも、デッドプールも、マイティ・ソーも、ドクター・ストレンジも、バットマンも、ジョン・ウィックも、
ジャック・リーチャーもそれなりのお年です。

やたらと壮大で長くて、観客を置いていってしまうような大振りな映画が多い中で、
もう少し狭くて、短くて、近い、それだけでなくそれなりに熱い作品がやってきました。
同日公開の「キング・アーサー」が派手なソードアクションなら、本作は渋めなガンアクション(それも漢の夢アイテム・ハンドガンとナイフ)。

洒落たお店で豪華なステーキもいいけど、街に昔からあるラーメン屋の中華そばでホット一息。
そんな感覚が解る方は本作がオススメです。
そういうわけで★は3つ。

・・・これもまた、配給会社さんや紹介記事にちょっと言いたいのですが邦題がヒドイ
そしてこの映画を「ジョン・ウィック」と並べて言っちゃダメ。テイストも製作意図も全然違うんだから。
どちらかと言うと、90年代テイストのケチャップをたっぷりつけた「コラテラル」(04年)でしょうが。

公式サイトにも
映画史上、最も激しい“怒り”に突き動かされた復讐劇が今、幕を開ける
と派手に書かれていますが、おいおい、ライターさん。

主人公のスタンリー・ヒルが遭遇した不幸は確かにヒドイけど、こういう作品では「よくある設定」だし、近年だともっと怖いくらいの怒りという意味では『悪党に粛清を』(14年)のマッツ様の方が鬼気迫ってます。
★ワタクシの紹介記事★

それに何故か、ジョン・トラボルタが全編通して「そんなに怒っているように見えない」のでしたΣ(´∀`;)
あ、ここはツッコんじゃダメなのかも。ジョンは凄腕の工作員でしたものね。

この作品は確かに復讐劇という側面もあるけど、どうして自分で手を下すことになったのか?という方にフォーカスするべき。(『パニッシャー』にも通じる社会問題が背景に有りますよ)

そうそう。90年代ヒーローは細マッチョではなく、ゴツマッチョ。
スタローン、シュワちゃん、ジャン・クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレン。
彼らに憧れて筋トレに勤しんだ80年、90年代生まれの世代は多いハズ(笑)
結局仕上がりは、ブルース・ウィルスみたいな感じになっちゃうのかも(笑)
それでもブルース・ウィルスはブルース・ウィルスというカタチを作っちゃってますからね。
ジョン様も還暦を迎えたと言うのにデカイです。
漢はこれでもいいんだと、踊って歌っている細マッチョ軍団好きのレイディー達に教えてあげよう。


この作品、冒頭の導入が凶悪事件の速報チックにこれでもか~と流すのですが、
「パニッシャー」と同じように、ここでこの映画の言いたいことは全て言われてしまっています。
テロも怖いですが、お茶の間のニュースで流し見されてしまうほどの凶悪犯罪が溢れているんです。
一般市民としてはそちらのほうが恐ろしいわけで。
すんごい経歴を持っている人も等しくそういうものに巻き込まれるということです。
その点「戦闘」をアートにした結果、ストーリーは料理屋のお通し程度にしてしまった「ジョン・ウィック」よりも社会性はあるのかなぁと。

とはいえ、
大筋のストーリーは明快過ぎる一本道の勧善懲悪もの。
追いかけっこです。
ひとり、またひとりと妻の殺害に関わった人間を芋づる式に追っていきます。
というか「どうせお前も悪いだろ」と感じた人間が「ホントに悪いんかい!!!」となる様は痛快でもあります。
アクションシーンも派手なカメラワークもワイヤーアクションもCGも一切ない「痛い!」肉弾戦が見られます。
シーンは少ないけど確かにオッサン達キレキレです。
それに細かいけど凶器の捌き方やそこからの反撃なんかは「もっと見せて!!」と胸熱。

ホント、90年代の解りやすいタフな漢の戦いを観る作品を彷彿とさせるので30歳以上の観客は「ある意味で安心」するかも。
わたしは好き。時々挟まれるウィットある台詞とか特に。
やっぱりなぁという演出や展開はエンディングまで続いちゃうんです。

逆に「複雑で入り組んだ伏線」「難解な設定」が当たり前の作品に浸かってしまっている若い世代の観客からは物足りなさを覚えるかもしれません。

ジョン演じるスタンリー・ヒルよりも好きになってしまった相棒デニスの拠点はなんと床屋。
なるほど、一昔前なら情報源は自動的に酒場だったけど、床屋もペラペラお喋りしちゃうという意味では見落としてましたな。
この辺、紳士の国の喫茶店やテーラードスーツ店を隠れ家にしていた「キングスマン」(14年)への皮肉かなとも感じて個人的にはツボでした。
続編あるかもな。スピンオフでデニスが主人公のドラマでも製作しないかなぁと期待です。

・・・・うむ。レンタルでも良かったかな(笑)
好きなんだけど、好きなんだけど。
通な方は是非劇場でお楽しみください。

2017年映画鑑賞 98本目

◆overview◆


・原題: I Am Wrath 2016年公開
・上映時間:91分
・監督:チャック・ラッセル
代表作:『マスク』(95年)
・脚本:スチュアート・ビーティー

<メイン・キャスト>
ジョン・トラボルタ
クリストファー・メローニ
アマンダ・シュル
サム・トラメル
パトリック・セント・エスプリト
レベッカ・デモーネイ
アサンテ・ジョーンズ
ポール・スローン

2017/06/09

パトリオット・デイ 感想~こうして、事実は物語になっていく~【映画レビュー】

◆パトリオット・デイ 感想◆


評価/オススメ:★★★★☆


◆synopsis◆


2013年4月15日。
誰にとっても『ありふれた1日』になるはずだった・・・・

殺人課の刑事トミーは朝からボストンマラソンの警備に駆り出されていた。
オリンピックの次に歴史の古いこのマラソン大会は、毎年祝日である“愛国者の日”に開催され、117回目を迎えるこの日も50万人の観衆で賑わっていた。

次々と走者がゴールインする最中、トミーの背後で突如大爆発が起こる。歓声は悲鳴に変わり、逃げ惑う人々と折り重なって倒れる負傷者で現場はパニックとなった。

到着したFBIのリックは現場に散乱した金属片を見ると「これはテロだ」と断言。
テロ事件はFBIへと捜査管轄が移ってしまう。
犯人逮捕に燃えるトミー達ボストン警察の警官たちは歯ぎしりをするが、病院を回って負傷者たちへ地道な聞き込みを行う。

やがて監視カメラに映る不審な“黒い帽子の男”と“白い帽子の男”が容疑者として浮上し、事件はアメリカ全土を揺るがす緊迫の事態へと発展していくのだった……。

※公式HPより
※一部文月加筆訂正

◆comment◆


この映画は決して踊る大捜査線ではありません。
もちろん事件と対峙するのは多くの警察の方です。
ただし題材は起承転結はありますがいわゆる「ドラマ」ではありません。
結果としてドラマチックに展開した事件を描いています。

非常にデリケートな事件を扱った本作。
アメリカという国はメモリアルをものすごく大切にする。

そのあたり日本とは違うのかなぁと感じます。
もちろん日本人だってそういうものを大切にするけども、違っているのは手法です。
日本では伝統的に事件や事故なんかをタブー視する傾向があり、
アメリカはその逆で明らかにしたり、キャッチコピーなんかをつけてシンボルにしてしまうことでイベントの温度を高めているように感じます。

監督はハンコック(2008年)とバトルシップ(2012年)は個人的には好きだよピーター・バーグ。
ローン・サバイバー(2013年)はSEALsがひたすら崖から落下して痛かったという印象が先行でしたが。

主演はバーニング・オーシャンにつづいて、わたしにとってはおそらくずっと”ボブ・リー・スワガー”マーク・ウォールバーグ。タフガイかと思いきやテッドでガラリとおちゃめキャラを演じたり、プロデューサーとしても幅広く活躍してます。
脇を固めるご存知ケビン・ベーコン、クローバーフィールド10のでっかいおっさんジョン・グッドマン。
おそらく本作いちばんのタフな男はJ・K・シモンズ。見ての通り、男、男、男。
そんな中、存在感たっぷりのカンディ・アレキサンダー(CSI:マイアミをご覧の方にはおなじみです)も結構イカしてました。

話を戻します・・・
実はワタクシの自宅の近所にものすごく紳士なアメリカの方が住んでいて、
ワタクシのものすごく適当な英語でも陽気に受け入れてくれる方なのですが、
ある日激しい夕立が鳴った夕方にその方に「Enjoy storm!」と声をかけられました。
また、飼っていらっしゃる子猫が不慮の事故で亡くなった際にも、お悔やみを言うと
「彼はいい人生だった」と片言の日本語で答えてくれました。

ワタクシはこのパトリオット・デイを鑑賞した際に(他にもノンフィクションの映画を観た際に)、凄惨なイベントであっても、何かを必ず見出そうとする彼らの「強さ」に素直に脱帽してしまうのです。

前述の方の言葉も同じでした。

もちろん全てが全て同じだとは言えないのだけど、そういうある種プラスに転じていく
「陽気さ」がアメリカという国を、そこに住む人を「ドラマチックに」してしまうのだろうと思います。

この作品はある記事で「踊る大捜査線」と日本人がイメージしやすいコピーで飾られていたのでお断りしますが、
派手で真っ赤に塗りたくったようなBGMも熱血青島刑事も可憐なすみれさんも出てきません。
極力淡々と何が起こったのか?を描いています。
この監督とマーク主演の「バーニング・オーシャン」と基本は同じテイストです。
ドキュメンタリー寄りのノンフィクションベースのフィクションという微妙な映画になるのかなぁ。
というのも、ノンフィクションとはいえ映画という枠に収めるためには事実の再構成も、情報の取捨選択も必須だからです。
つまりは「解釈」の問題になるわけです。
(「バーニング・オーシャン」については、google+でも感想を書かれています
[Satomi “さとちゃ” B]様 http://eiga.com/movie/84435/review/01551064/ の記事も紹介いたしますが、まったく同感です)

そういうわけで「描かれた事実が真実であるのか?」「どこまでを汲み取っているのか?」は考えないといけないところです。

結局のところこの事件の真相は映画では描かれません。というより、描けないだろうと。
この作品は社会に問題提起をしている訳でも、事件を考察している訳でも、悲劇を演出している訳でもないと思います。
ではこの映画ってなんで作ったの?
バーニング・オーシャン同様に(あれよりは偉そうでもないけど)、わたしたちの「何気ない普通の生活」って、実はものすごく危ない薄氷の上に立っていることを「淡々と示して」いるのだと考えます。
無言のメッセージとして。
そういう意味で突然会場が爆発する、例のシーンは「本当に怖い」ですな。

なにも悲観的に考えているわけではないのだけれど、普通の生活が壊れる時、いつだって犠牲になるのは「わたしたち一般人」であって、それを解決するのも「わたしたち一般人」なのです。
この事件で活躍するボストン警察の人たちも家族がいて、恋人がいて、笑い合える仲間がいる「一般人」なのです。
今までヒーローを演じてきたマーク・ウォールバーグも(複数の人のエピソードを繋げているけど)「普通の街の警官」なのです。
不幸にも犠牲になった方も、犯人側へと迫るきっかけを作ったのも、犯人側と戦ったのもヒーローではなく「わたしたちと同じ普通の人達」なのでした。

最初にもどりますが、そういう訳で、この映画は決して踊る大捜査線の様なエンタテインメントではありません。
明確な答えがない映画。だからちょっと難解かも。
だって、わたしたちの生活は「ドラマ」ではなく「現実」なのですから。


2017年映画鑑賞 93本目

◆overview◆


・原題:Patriots Day 2017年公開
・上映時間:133分
・監督:ピーター・バーグ   
代表作:『バーニング・オーシャン』(2017年)
・脚本:ピーター・バーグ
          マット・クック
          ジョシュ・ゼッツマー

<メイン・キャスト>
マーク・ウォールバーグ
ケビン・ベーコン
ジョン・グッドマン
J・K・シモンズ
ミシェル・モナハン
アレックス・ウルフ
セモ・メリキッゼ
ジェイク・ピッキング




2017/05/14

メッセージ/Arrival 感想 ~世界は『言葉』でつくられている~【映画レビュー】

[映画感想]


◆メッセージ/Arrival 感想◆


評価/オススメ:★★★★☆

◆synopsis◆


突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。
謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、
“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。
その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。

◆comment◆


解った、だとか、解らないだとか大きく評価が割れる作品がある。
キャストもVFXもカメラワークも飛び越えて、物語の世界に「浸った」側が
得られるある種の充足感が「観てよかったぁ」って気持ちを引き出す呼び水になる。
その充足感得やすい作品と難しい作品がこの世界には存在する。

もちろん創り手側としては、そうした充足感をより多くの人に得て欲しいと常日頃考えている。それが仕事だし、それが対価の原資になるからだ。

ただ、それは商業としての物語のあり方を考えた場合。
面白い話。ワクワクさせる設定。紡がれる『言葉』の根底には「どうやって楽しんで(あるいは怖がって/考えて)もらえるか?」という「意図」があります。
だから「意図」をより多くの人に伝えるための、受け入れられるための『言葉』には明快さが不可欠だ。

ただし、明快だから受け入れられる、良い、と言う訳でもない。

『言葉』を用いる『意思疎通』の最大の難しさとは『解釈』という送り手/受け手双方のフィルターが内在するからだ。

『解釈』 この作品の重要なワードです。

ドゥニ・ヴィルヌーヴという監督はこういうことを狙って物語を作れる稀有な人物だ。

「複製された男」なんて人を選ぶし、難解で中二病的だし、根暗なトンデモ映画だ。
「プリズナーズ」、「複製された男」、「ボーダーライン」どの作品もワタクシは大好きだけど、描かれているのは「こちら側と向こう側」という線引が如何に曖昧で、移ろい易いものなのかだと思う。

つまり、描いているのは『人間』だということだ。

『言葉』つまり『言語』というものが一種類しかない世界だとしたら、物語が掴まえることができるものはひどく狭くて味気ないものだと思う。

故に面白いと思う方も、その逆の方も多い作品になると思います。
(「グレート・ウォール」や「無限の○人」などとは別の意味で)
これは制作側の意図(もっと言うと原作者の)であって、『解釈』が分かれるほど『狙い通り』になったということですよ。はい。

言葉繋がりで、ひとつだけ個人的に変えてほしいのはこの作品の邦題。
『メッセージ』で本当に良かったのかなぁと。。。

原題のArrivalじゃないと、誤解を与えると思う。
予告編の作りも、公式HPも『メッセージ』に主題を置かれているけど、
この映画の本質は『言葉』であり『時間』であり、このふたつがひとりひとりに
舞い降りた時に用いられる『LIFE』だ。

話を戻します・・・
実はちょっと前に試写会に幸運にも行けて、そこで観ておりました。
今週5/19(土)からようやく公開ということで、劇場に行かれる方もいるかと思い更新です。

この作品は『インデペンデンス・デイ』(1996年)や『インターステラー』(2014年)に並んでコメントされているのを散見しました。
文月としては、真っ先に思い浮かんだアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』やロバート・ゼメキスの『コンタクト』(1997年)寄りの物語だと考えます。

ファーストコンタクトというカタチを取った『意思疎通』の再定義を狙った思考実験。

これがこの映画です。

だから『インデペンデンス・デイ』みたいなド派手なアクションも熱い人間ドラマも、

『インターステラー』のような地球の危機や壮大な宇宙探索も、ありません。

そういうものを期待されてスクリーンの前に座った方はごめんなさい、きっと『面白くない』と思われるでしょう。

突如地球に舞い降りた12の『物体』が世界の主要な場所に陣取っていく様はなるほど『インデペンデンス・デイ』を彷彿とさせますね。

2017年の混沌とした世界なら、物体が現れた時点で即全面攻撃となっていたのかも知れませんな。

しかし、この物語では非常事態宣言は各地で出されますが、まずはきちんと『意思疎通』を図ろうとするのです。

黒塗りの種子然とした巨大飛行物体は地球のものであるのか?

そうでないなら、相手は誰なのか?

どういう目的を持っているのか?

どうやってこちらにやって来たのか?

劇中のあるシーンで印象的な言葉がありました。

「これはアボリジニと同じだ」

アボリジニと、固有名詞を出していますが、これは取りも直さず大航海時代(それ以前からも当然有りましたが)より欧州がアフリカ、アジア、アメリカ大陸に対して行った植民地政策の事を引き合いに出しています。

まぁ、人類の技術で察知できない方法で世界に同時に出現した『物体』とそれを動かしている『生命体』は、その存在を持って我々より数段優れた文明を持っていることは明らかです。

よって話を戻すと、『誰で』『どうして』『何のために』やって来たのかという事を正確に把握しなければなりません。

人間同士ですら『来られた側には無い技術』を提供する代償として『多大な利益』を引き出そうと画策してきた訳ですからね。

未知なる相手を前に『悪意の解釈』を持って対峙する訳です。

物語はこの未知なる存在とどのように『意思疎通』をしていくのか?

そして、ある重要なキーワードをどう『解釈』するのか?

その『解釈』を世界はどのように『共有』していくのか?

を巡って主軸が展開していきます。

その未知なる存在との交流、そこで交わされる『言葉』、彼らを巡る人間たちの『解釈』の違いを通して主人公の言語学者は『自分自身』についてある気付きを得ます。
彼らが残したメッセージというより、彼らによって気がついた○○。

だから原題は『Arrival』なんだ。と落ちるわけですね。。。。
(Arrivalを辞書で引くか、google先生に聞いてみてください)

世界には7,000以上の言語があると言われていて
(この辺は専門家ではないので、断定はしません。
引用 http://www.ethnologue.com/ (SIL International))
表記されるだけである言葉について7,000前後の『訳語』が存在するということになります。しかし『訳語』はあくまで『訳語』であって、それがニュアンスまで完全に一致しているかは不明瞭です。そもそも『そうした言葉がない』ということもありえます。

人は思考を表現するツールとして『言葉』を用いているのであって、そうした意味では『言葉』というものも実に曖昧だということになります。

曖昧な思考→例えば「あなたが好き」というのは言葉での表記ですが、込められた感情の強弱、表裏、度合いまでは完全に表せません。せいぜい絵文字を用いたり、文字の大きさを変えたりと、装飾することでなんとかニュアンスを「表現」できるくらいです。

言葉 /言語 の曖昧さ。
伊藤計劃の虐殺器官ではないですが、これがこの物語の根底です。
それでも解り合いたいから意思疎通をする。
それでも100%のコミュニケーションなんてない。
この「言葉」というツールの恐ろしさと素晴らしさ。

未知の存在、そして巡る言葉の解釈で、国同士が、組織が、個人が激しく揺れ動きます。

で、結局世界はどうなんの?

ここまで散々『言葉』と書いてきてなんですが、『時間』というのもこの作品の重要なファクターです。
この作品の壮大なトリックとは、
原作『あなたの人生の物語』ってタイトルに集約されていきます。
作者の関心や原作からすると、言葉そのもの、時間の概念の方がウェイトが高い印象。
この『時間』って概念。これもこの作品にやられたぁと思わせる深いキーワードです。
あぁ、これ以上書けない。

『よく良く解らない誰か』とどう向き合うのか?
『よく解らない自分』とどう向き合うのか?
そこに付け加えられるのが『母性』だということになると・・・
昔流行った「セカイ系」にも似た所にも通じた所にも行ってしまうやんけ・・・
ま、原作が発表されたのが1998年だからなぁ、とその時期の『言葉』に浸っているワタクシなんかはそういった『解釈』に毒されてしまっていますがΣ(´∀`;)

サイエンス・フィクションというより、スペキュレイティブ・フィクションとしてのSF作品。
言葉ひとつで個人も世間も国家さえも変えられてしまう現代。
この時代、この世界情勢だからこそ、観た時に考えさせられるものが多い。
未知の存在とは、膨らみすぎたゆえに見えなくなっている世界そのもののように感じられる。
非常に有意義な映画体験でした。
文月としては、是非とも『Arrival』して欲しい一本です。


2017年映画鑑賞 41本目

◆Overview◆


・原題:Arrival 2016年公開
・上映時間:116分
・監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ   
代表作:『ボーダーライン』(2015年)
    『プリズナーズ』(2013年)
          『複製された男』(2013年)
    『ブレードランナー2049』(2017年)
・脚本:エリック・ハイセラー

<メイン・キャスト>
エイミー・アダムス
ジェレミー・レナー
フォレスト・ウィテカー
マイケル・スタールバーグ
マーク・オブライエン


2017/04/16

グレートウォール 感想 ~気高く、美しく、禍々しい。其は長城、聳え立つ本物の『壁』~【映画レビュー】

[映画感想]
 

◆グレートウォール 感想◆


評価/オススメ:★★★☆☆
(ファンタジー、無双ゲーム好きなら満点か!!)


(原題:The Great Wall / 長城 
2016年公開(全米公開2017/日本公開2017年4月14日)
上映時間:109分

・監督:チャン・イーモウ   
・代表作:HERO 英雄 (2002年)/単騎、千里を走る。 千里走單騎 (2005年)
・脚本:カルロ・バーナード

★出演者★

マット・デイモン
景甜
ペドロ・パスカル
ウィレム・デフォー

◆summary◆


壁。

威容を誇る、壁。

内なる者には希望を、そうでないものには絶望を与えるためのもの。

この国は古来より忌むべき方位というものがあった。

それは西でも東でも南でもなく、北だ。

日本も同じですが、中国でも時代が揺り動く時にははっきりと「外圧」というものが姿を見せました。

そして、多くの場合には北から南へと、まるで巨大な神の手で押しつぶされているみたいに侵攻を受けてきました。

地図を広げてみればよく解りますが、北はがら空きなんですな。

だから遥か春秋戦国の時代から長城は作られるほど、北への備えとは大小の国家を超えた問題だったのだ。

そういう訳で『壁=長城』とは『強大』で『優麗』であり、敵からは忌み嫌われる必要があったのだ。軍事的にも、政治的にも。

その壁を巡る、ひとつの物語。

馬賊に追われた西洋の傭兵たちが、長城の前に立った時、世界は動き始める・・・・

◆comment◆


歴史アクションではなく、めちゃくちゃファンタジーです。はい。

それも進撃の○人でもなく、○双OROCHIでもなく、ドラ○ンクエストや○ァイナルファンタジーやその他有象無象でもなく、「全部ごった煮」なファンタジーです。もちろん○ールド・ウォーZでもございません。

とりあえず美味しそうな材料を全部入れちゃった鍋。そんな感じですか・・・・

え?これはどこかで観たことが・・・・、という言葉を飲み込めるかが、この映画をどのように受け止められるのかのキモです。

海外どころか日本でもレビューが割れているらしいですが(汗)
この映画は純粋なエンタテイメントとして楽しむことが一番ですね。

時代設定の宋代には長城防衛はほとんどされていなかったらしいこと、

実際の長城はこんなに強大ではないということ、
(意外と簡単に抜かれたこともある、とか何とか・・・。壁が弱いというより、攻撃してくる相手が強大であったということ)

これほど規律あふれる軍隊でもなかったらしいこと、
(と、いうよりお国柄いつの時代も、とか何とか・・・)

お国柄、外敵を「怪物」にデフォルメしたりするのが伝統なので、劇中描かれる怪物が「どこかの国」じゃないか、と勘ぐってしまうこと

世界を滅ぼすという怪物が、どうして中国にしか攻め込まないのか?という疑問。。。。

こういうことを、グッとこらえてポケットに押し込んでしまえ。
それが文月陽介的グレートウォールの楽しみ方です。

色彩の天才、チャン・イーモウ。

言うまでもなくHERO/英雄でも描かれた『幻想的』で『官能的』な色の世界を今回も惜しげもなく描いています。

これに関しては素直に、禍々しい敵から国を護るために戦う勇者たち、を、すごく華麗に描いているし、萌えました♡

万里の長城って、その存在自体が人間の想像力を掻き立てることができる『現存するファンタジー』なのだから、そこから派生するのはこういう世界なのだ。

そう、だから、純粋に
『いつも取り残される男』=マット・デイモン
が、

今作ではどうして残ったんじゃい!!!と、

いつツッコんだらいいかなぁ~、楽しみ♫ってな感じで観ていました。

ま、ジェイソン・ボーンがファンタジー世界にトリップしたら、こうなりますデス。
はい。

ただし、素直すぎる設定も、萌える出で立ちも、魅せる集団戦闘も、観る側の楽しさを考えるとこの映画は★★★★★です!3Dで観るには、こうした映画は本当に楽しい。

マット・デイモンも、きっとファンタジーしたかったんですよ。きっと。
超大作というには(キャストや投入された制作費は別)描かれるのはあまりにも狭い範囲の出来事だし、駄作というかというと、ひどくはない。

日本人にとっては、デジャ・ブを観ているような映画。とっつきやすいと言えば、そうですねぇ。それがどこか大振りすぎる当初のプロモーション内容と作品そのもののギャップという形で出ちゃうのだろうなぁ。

ただ、ワタクシはどこか、現代版スターシップ・トゥルーパーズの様な感覚に襲われました。
(あ、勘違いされてはいけないのですが、スターシップ・トゥルーパーズは原作もゴリゴリの反戦映画です)

壁繋がりで言うと、ギェレス・エドワーズ監督のモンスターズ/地球外生命体(2010年)のように、メキシコ国境に築かれた壁(あぁ、なんとか大統領みたい)を使って痛烈に某国を皮肉ったりして欲しかったですが・・・、そうではない。

壁はこれからも変わらず人々を護っていく、って感じのフェードアウトには、反戦というより別のメッセージがあるのでは?とも思えて、ちょっぴり切なくなりましたな。。。。。

ちなみにモンスターズ/地球外生命体(2010年)↓↓


しかし、今作はヒロイン9割、残りがストーリーやその他(汗)の構成。もっと言えば、ヒロイン爆死。。。
整いすぎて、現実感のない、仙女のような景甜さん演じるヒロインが
終始、男性陣のココロをそわそわさせるのでした(笑)
これはCGではありません。
いやぁ、甲冑に身を包んだ彼女の凛々しき姿は、是非スクリーンで御覧ください。

そりゃ、マット・デイモンも決死の覚悟するわ!!!!!!
傾城傾国の美女がエリート軍人とか萌えてまうわ!!!
華麗に戦うヒロイン最高だわ!!!
眼精疲労取れてまうわ!!


*景甜さん*
彼女のインスタグラムをご覧になりたい方は、こちら↓↓
https://www.instagram.com/jingtian_official/?hl=ja

あぁ、もう一回HERO/英雄観よう・・・・



2017年映画鑑賞 70本目

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第7並行世界のユートピア

物語の海に溺れる中で、フレーズ、イメージを繋ぎ合わせて生まれた短いストーリー達を文月陽介が書き留めます。 特定のジャンル、モチーフにこだわらずに、ひとつひとつの物語を紡いでいます。 ※筆者の気まぐれにより不定期更新です。

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